百円

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ーーあぁ、今年もラムネを買っただけ。 何故、神たる我がここまで苛まれぬのか。 全てあの娘のせいだと思うものの、娘が何かしたわけでなく、我が勝手に腹を立てているだけだと思うと、余計に腹ただしい。 昔、あの娘がまだ童といえる頃合いの折、境内で遊ぶ他の童に紛れて遊んでいた時には、何とも思わなんだ。 それが、そのうちに居なくなり、しばらくして戻ってきて、『またこの土地にお世話になります』と挨拶に来た時、妙に気になった。 あまり力の強くない我を見限り、力のある神の土地へと移りゆく者ばかりな中、戻ってきた娘。 人と神では住む世界が違う。 理屈では分かっているし、人の身である娘に、神の業を背負わせるつもりもない。 ただ、せめて、人の儚い時の中。 その中のほんの少し。 娘と他愛ない話をする事さえ、出来ぬとは。 あぁ、せめて、もう少し百円があれば、またラムネを買えるものを。 嘆いても、賽銭のうち、我の取り分として手元にあるお金は増えなんだ……。
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