1.当たり前が当たり前ではなくなるとき

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 「もしもし……」  「あっ、春風栞さんの携帯でよろしいですか?私、警察の浦井といいます。」 警察!?私、何かやらかしてしまったかしら、と不安に駆られたが浦井とやらの次の言葉に絶句を通り越して一瞬にして言葉を忘れてしまったかのような衝撃を受ける。  「栞さんのご両親が事故で亡くなられました。念のため本人確認をして頂きたく、署まで来て頂きたいのですが……」 リビングの真ん中で立ち尽くした。(この浦井とやらは何を言っているんだろう、冗談にしてはキツすぎる。きっと悪い夢でも見ているに違いない。早く起きなきゃ!!!)  「もしも~し!しおりさん!?聞こえてますか?」  「……」 ハッと我に返り、偶然パパが消し忘れたテレビが目に入った。 『次のニュースをお伝えします。……事故により乗っていた男性と女性がいずれも死亡……』 全く理解が追いつかなかった。ニュースキャスターが伝えている無機質で、感情が一切差し挟まれていない言葉は、私のパパとママの死を残酷にも淡々と伝えている。まるでこれは私に対して、いま目の前にある世界は夢の世界なんかではなく、現実の世界なんだよということを突き付けられているようだった。
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