3.平和を願う自身は、波乱の波に飲まれるものである

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 目にもとまらぬ鮮やかな早着替えと準備を済ませ、少しむくれた栞と一緒に家の玄関を出た。 (そんなにむくれてるなら、俺と一緒に登校しなきゃいのに……。)すると、栞の『キャッ』という、声にならないような小さな悲鳴が聞こえた。俺もどうしたものかと思い、栞の見ている方向へ目をやる。すると、見覚えのある黒塗りの高級車が俺の家のすぐ近くで駐車され、しかも中から見覚えのあるお嬢様が、ジッとこちらを睨んでいる。俺は恐る恐るその高級車の近くまで行き、そのお嬢様に声をかける。    「おはようございます、西条さん。」  「あら、祐一さん。とても奇遇ですわね。このような所でお会いできるとは。」  西条さんは、たいそう不機嫌混じりで俺の挨拶に応える。てか、『奇遇ですわね』って、さっきまでこっちを睨んでただろ……。ほんとに西条さんストーカーとかしてないよな?  俺の心配をよそに、西条さんは車から降りて俺に詰め寄る。栞はこの時点で見事に真っ白になっている。  「私の電話を無視し続けた挙句、翌朝になっても折り返さないとは、なかなか祐一さんには度胸がそなわっているのですね。」     
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