4.そして彼女は裏切りに満ちた世界に光を見いだす

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4.そして彼女は裏切りに満ちた世界に光を見いだす

  「ゼェ……ゼェ……ゼェ……間に合った……」  なんとか遅刻ギリギリで学園の門をくぐりぬけた。栞に至っては走った疲れで目を回している。生徒専用の中央玄関に向かう途中で、いつも通りの人だかりを目にする。  「西条さん毎日大変だな……。」  遅刻ギリギリだというのにこの人だかりだ。その一人ひとりをよく観察してみると(主に女子がほとんどだ。)みな目を輝かせ、顔一面に笑顔を“貼り付けている”という表現がしっくりくる。なんだか違和感が残る。なぜなら、西条さんは主に女子から人気で、好かれているんだろ?だったら、わざわざ笑顔を『貼り付けている』なんて思わない。だから何かあるのではないかという考えを持って当然ではないだろうか。 ───ゴーンゴーン───  学園の朝のHRが始まる前の予鈴が鳴った。西条さんも周囲にいる女子達ににこやかに挨拶を交わし、自分の下駄箱に向かう。女子達はというと、西条さんが下駄箱で靴を履き替え、高等部棟に入っていくのを確認した後、さっきまでの笑顔とは裏腹に、みな険しい顔をして、まるで海の波が引くように、サーッと散っていった。なかなか不思議な集団だが、俺も遅刻をとられるのは御免なので、教室へ急ぐことにした。  「あとで姉ちゃんにでも聞いてみるか……。」  俺は、いまいち繋がらない情報に一度思考をやめ、今日一日をやり過ごすことにした。
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