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2.時の流れは良くも悪くも人を変化させる魔物である
1.
俺と栞の、あの刺激的な出会いから2年の月日が流れた。時の流れとは実に残酷で、この世に生けとし生けるもの全てが逆らうことができない魔物である。ヒトはたびたび、時空をさかのぼることが出来たなら過去の自分を変え、未来の自分自身に最良の結果を求めようとする。だがちょっと待ってくれ。そもそも『時間』というものは、人間が勝手に作り出した概念にしか過ぎず、さかのぼったり、現在よりも先に進むことも不可能である。唯一できることと言えば、時間の流れに乗って、良い悪いを別として『変化』を遂げることのみだ。
「祐一!早く起きないと遅刻するわよ!」
「あと……5分……」
1階から叫ぶ母さんの声に、朝起きられないヤツが絶対に言う王道の台詞で答えた。なんせ4月だ。いくら春だと言えどもまだ寒いし、誰が好き好んでこの幸せな睡眠を手放そうか。そもそも睡眠とは、人間が活動する上で最も重要な行動のひとつで、これを極端に怠ればたちまち死に至るという恐ろしいも……
「とりゃぁ!!」
「グフォァ!!」
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