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いや待てよ。
せっかく異世界に行くんだ。そんなスエット姿で行っては早々に出会うであろう美少女ヒロインに幻滅されないか!?
それこそ、浮浪者だと思われかねない!
危ない所だった……
僕は急いでクローゼットの前に行き、服を漁った。
スーツ!?いや!就活じゃないんだから!
動きやすいジャージか!?さ
いいや!だめだ!
ジャージで異世界に飛ばされて後悔している主人公は嫌というほど見てきた!
あれこれと迷っている時にふと、部屋の隅の【ゆがみ】に目をやる。
今も変わらず歪んでいる空間は果たしていつまでまもってくれるのだろうか。
今この時も蝋燭の火のようにふっと消えてしまってもおかしくない。
そんな考えを僕を焦らせた。
クローゼットの奥から日ごろ使わない、サバゲー用のブーツと黒のミリタリーズボン。
お気に入りのユニクロで買った肌着と長袖のTシャツ。
紺のレインパーカーを急いで着込むとリュックに着替えとタオルを詰め込むと、キッチンにむかい、シンク下の扉にあった防災キットやら、カロリーメイトなんかの携行食。
冷蔵庫から飲み物やらなんでも詰め込んだ。
そして部屋にもどって【ゆがみ】をみてみるとさっきより心なしか小さくなっていた。
僕はいそいでスマホと充電器、部屋にあった役に立ちそうなものは手当り次第バックの中に詰め込んでだ。
その間にも少しずつ【ゆがみ】はその大きさを縮めている。
僕はそれを見て焦ったのか、何も考えずに手を伸ばした。
(あ、もしかしたら、これは異世界の入口とかじゃなくて、単なる空間のゆがみで体がぐちゃぐちゃにされちゃうかもしれない。)
そんな事を考えた時には、もう体がその【ゆがみ】に吸い込まれていた。
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