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そんな話を聞かされてから数分後にそのホテルに着く。
これから肝試しをしようという時に問題が起きた。
メンバーの一人である女の子が体調不良を訴えたのだ。
そしてその女の子は頑なに肝試しを拒否する。
帰ろうなんて話も出るが折角来たのに収まりがつかない。
結局、じゃんけんに負けた奴が行くことになった。
そしてその結果俺が一人で行く羽目になったのだ。
車から降りて数分するとホテルのエントランスに入る。
空気が重苦しくのしかかりいかにもな雰囲気だ。
俺は引き返そうとも思ったが皆の手前行くしか無い。
重苦しい空気と恐怖心に耐えながら階段を登り続ける。
やっとの思いで屋上に着くとさらに空気は重くなった。
だが、屋上から手を振ればそれで終わりなのだ。
問題の自殺があった手すりに近づき皆に手を振る。
すると、俺はある事に気付いてしまった。
背後に何かの気配を感じているのだ。
恐怖心からくる錯覚だと信じたいが足音もする。
ヒールのような高い足音が近づいてくる。
まずい、俺はそう思いながらもゆっくりと振り返る。
右から徐々に振り返れば心臓は狂ったように鼓動する。
そして、振り返るとそこには誰も居なかった。
良かったやはりただの気のせ---
「こっちだよ...」
左の耳元ではっきりとそう囁かれたのが分かった。
俺が、半狂乱でそちを向こうとした時だった。
握っていた手すりが嫌な音を立てて崩れる。
体勢を崩すと、黒い服の髪の長い女が見えた。
身体が投げ出された時耳元ではっきりと聞こえる。
「貴方の居場所は...こっちだよ...」
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