在庫処分セールな布の価値

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 どうやら誰だったのか分からない。  その記憶もその内、思い出せるよと僕は慰めて、周りの人に聞いて質屋を目指す。  やがて、袋のようなものの看板が下がったお店にやって来た僕は、とりあえず、セールで手に入れた布を渡すことに。  花柄が綺麗な紫色の鮮やかな布ではあったのだけれど、 「! こ、こんな色鮮やかで繊細な模様の布があるなんて! しかも魔力が!」 「え、えっと、え?」  その布は多分在庫処分セールの、と思ったけれど質屋のおじさんは、 「こんなもの見たことがない。こんな高級品……いや、貴方が着ている布も魔力を感じますしその色もまた鮮やかで……もしやこれは、空の浮遊大陸の品!?」  どうやら空を飛んでいるあの島が浮遊大陸ではあるらしく、こういったものがあったりするらしいけれど、あそこから来たとなるとラズの追手が……と思った僕は、 「僕達は、正確には僕自身がはるか遠くの、海を越えた東の島国から来たのです。聞いた事がありませんか? こういった物を作るのが盛んなのですが……」 「いや、聞いた事は無い」 「そうですか……地元では有名だったのですがここまで来てしまうと、それほど知名度がないのですね」 「いや、私も知らない事も多い。分かった、これを購入しよう。そうだ、こちらの硬貨(コイン)も一緒ですね……これら全部で120ゴールドではどうかな?」  といった話になるが、そこからラズが交渉してくれた。  実は事前にこの布はラズの“鑑定スキル”でどの程度の価値があるかを見てもらったばかりだった。  とてもではないが値をつけるのが大変なことになりそうだが、120ゴールドではあまりに安すぎる。  だって、日本円で12000円くらいだし。  それから何とか交渉して5000ゴールドをどうにか手に入れた。  これでも安すぎるものだけれど、お金が必要なのでそのお値段で。  そしてお金を手に入れた僕は、質屋を出て本日の宿を探しに向かう。  手に入れたお金の袋に機嫌をよくしながら僕は、 「これでしばらくの旅の路銀にはなるね。でも布に魔力を感じるって言っていたけれど、どういう事なんだろう?」  僕の世界には魔力は無いのに変だなと僕が思っていると、そこでラズが、 「リトの布には魔力があったぞ、そしてリトの服にも、硬貨(コイン)にも」 「え?」  そう、僕に不思議そうに告げたのだった。
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