抱きつかれた

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 良さそうで安そうな宿を探してみた。  少し路地に入った所に値段の安めの宿がありそこに入る。  しかもダブルベッドの一部屋だとお値段が安い! これからの生活を考えると、お金を節約しなければと僕は思ったので、 「ラズ、同じ部屋でいいかな?」 「……リトが良ければ」  そう答えるラズ。  なので僕は、ダブルベッドの部屋をお願いすると、何故かラズに後ろから抱きつかれた。  なんでだ、と僕が思っているとそこでラズが、 「抱きつきたくなった」 「……動けなくなったので、出来れば止めてもらえると助かります」  そう答えた僕は、何かを悟ったような宿の主人から鍵を貰って部屋に向かう。  とりあえず突然抱きつくのは止めてもらおう、ドキドキするしと僕が思って部屋の鍵を開ける。  そこには大きめのベッドと机といすが置かれている。  安い宿だったとはいえ、簡素だが清潔なシーツがベッドにはかけられていて寝心地は良さそうだった。  こうして宿にやって来た僕だけれど、 「そ、それで僕の服にはどのような効果が!」 「近くで鑑定した方がいいかもしれない。ベッドに隣同士で座ってからで構わないか?」 「うん」  というわけで、僕はラズの隣にベッドの端に座る。  こうしてみると、ラズは僕よりも背が高い。  頭一つ分くらいだ。  そこでラズが振り向く。  黒い髪がさらりと揺れて、宝石のような鮮やかに赤い瞳が僕を映している。  美形なのもあって、不思議とずっと見ていたいような気持ちにかられる。  するとラズの顔がそっと僕の顔に近づいてくる。  慌てて逃げようとする僕の腰に、スルリとラズが手をまわして、 「逃げないで、そのままで」 「……な、なんだか変な感じがするよ」 「……それは、俺に邪な気持ちがあるから?」 「え?」
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