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沙織里は、少し冷めただろうお茶を口に含んだ。
一口目で火傷したベロの先端が敏感になっていて、それでも熱く感じたようだ。
またベロを出している。
「誰にでも会えるチケット。」
「えっ?」
沙織里の口から飛び出たまさかの言葉。
「えっ?じゃなくて。誰にでも会えるチケット。」
「誰にでも…
会える…
チケット…」
「そう。
凄くない?
私だったらアイドルプリンスの愛取deth男(あいどるですお)に会いたぁ~い。」
沙織里の目がハートになっている。
しかし、その話を聞いた私の心情はそれどころではなかった。
「誰にでも会える…か…
あの人にも会えるのかな…?」
私の頭の中には辛かった過去が蘇る。
幾度となく泣いた。目が腫れて開かなくなるまで泣いた。涙が枯れるまで泣いた。
あの一瞬で私は幸せからどん底に突き落とされた。
そんな封印された過去がフラッシュバックしてきて、頭の中に隙間なく広がっていった。
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