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坂本隆幸は授業ではほとんど寝ていて、人との関りもほとんどない。そんな隆幸が入学まもない数学の授業時、突っ伏して寝ていると教師が腹を立て、教科書でめったやたらに引っぱたいた。すると、立ち上がり教師をじっと睨みつけ「すみません」とつぶやきまた眠りについた。それ以降、教師は誰も寝ている隆幸に注意することはなくなったそうだ。とにかく、近寄りがたく友達のいない隆幸の評判は最悪だった。不良少女は、
「何のために来てるんだか。家で寝てればいいのにね~」
そういって挨拶をし、友達の輪の中に入っていった。
(本当にこれが、隆幸という人?)
昨日の優しかった、10年後の未来の旦那の評判とは思えなかった。コソコソと遠目から隆幸の起きるのを待っていたが、休み時間中に起きることはなかった。
(お昼なら!)
この高校は給食ではなく、お弁当を持ってきて食べることになっている。急いでお弁当の時間になって一年一組に行くと、机で寝ていた隆幸の姿はなかった。さっきの不良少女がいたので隆幸の居所を聞くが、いつもお弁当の時間にはいなくなり、誰もその行方を知らないそうだ。
「なんか運命が邪魔をしているような・・・」
そんなことをつぶやきながら窓の外を見ると、
「あ、いた・・・」
鞄を持たずに正門から堂々と校外に出ていく隆幸を見つける。真紀子は反射的に飛び出していた。「え?嘘?行くの?待ってよ」と言う明美の声を背に、上履きのまま外に出て、隆幸の出ていった方向に向かった。
「隆幸!・・くん。」
追いかけてすぐにその姿を見つけた。隆幸は学校のすぐ近くのラーメン屋さんに入るところで、急に名前を呼ばれてビクッと驚いてこちらを振り向いた。
(やっぱり隆幸だ)
振り向いた顔は、幼い感じはするが、確かに昨日一緒に過ごした未来の旦那隆幸だった。
「え?なん、なに?」
多少動揺した感じ、先ほど仕入れた怖いイメージとは少し違うものだった。勝手に外に出てご飯を食べるのは当然禁止されている。どうやら罪悪感はあるようだ。
「あ、あの、一緒に食べていい?」
「え、まぁ、別にいいけど・・・」
二人でラーメン屋に入った。
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