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一日の終わり
助手席で見る男の人の横顔のカッコよさを初めて知った。今までは、運転席にはお父さん。助手席にはお母さんが座ることが多かったので、真紀子は夜の高速道路を運転する旦那の横顔を新鮮な気持ちで見ていた。
家に帰ると、シャワーを浴びてすぐに寝室に行った。
(まさか・・・)
寝室にはダブルベットが一つ。もう寝ている奏太朗がパジャマに着替えさせられ真ん中にいる。子どもが真ん中にいるとはいえ、男の人と同じ布団で寝ることを考えると鼓動が高まった。
(いやいや、家族だから)
そう言い聞かせて、近くに置いてある結婚写真を眺める。
(あ、なにこれ、すごい!)
結婚写真の隣には、隆幸のリングで戦う写真。隆幸はプロのボクサーだったようで、リングの上で喜んでいる写真と新聞の切り抜きなども飾ってあった。飾られている写真を見ていると、
「今日、楽しかったね。」
シャワーから上がった隆幸が寝室に入ってきた。
「うん。本当に楽しかった」
真紀子は心の底から自然と声が出てきた。今日初めて会った自分の旦那さん。このありえない状況で、心から楽しむことができたことが不思議で、だけど当然のことのようにも感じた。
「真紀子さんと結婚してよかった」
唐突な言葉に、体全体が熱くなった。
(そうだ、今日は結婚記念日、特別な日だ)
「これからもよろしくね」
隆幸が近づく。ドクンドクンと高鳴る鼓動。
ーーーちゅ
唇と唇が一瞬触れるキス
隆幸が離れて、電気を消しに行く。
(あぁ、この後って・・)
この後のことを想像すると、頭から湯気が出そうなほどの恥ずかしさと緊張。拒む気持ちはない。がしかし、目をつぶって、体を倒すと、真紀子は3秒で寝息を立てて夢の中へ突入していった。
そんな真紀子に隆幸はもう一度優しくキスをすると、奏太朗を真ん中にして家族、川の字で眠りについた。
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