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学校に着くと、真紀子はすぐに親友の明美の襟首を掴んで捕まえた。
「隆幸って人知ってる?うちの学校にいるはずなんだけど!!」
興奮しながらも、事細かく隆幸の特徴を話す。が、明美は首を横に振って「知らない」と答えた。真紀子の通う学校は学年6クラスとそれほど大きな学校ではない。知らないことはないはず、と何度も聞く真紀子に明美は6クラス分のクラス名簿を持ってきた。
「なんでこんなもの持ってるの?」
「学園祭の学年イベントで使うのよ。どう?その隆幸って人はいる?」
その名簿を端から端まで何度も探してみるが、隆幸はどこにもいない。
「まさか。いるはずなんだよ。この学校に。ねえ、ねえ一緒に探してよ。お願い。」
「じゃあ、他の学年の名簿も手に入れますか」
明美は「しょうがないな」と真紀子を連れて教室を出た。真紀子は期待に胸を高鳴らせ、明美とともに他の学年の実行委員の子に声を掛け、2年生と1年生のクラス名簿を手に入れた。
「いない・・・」
「で、その隆幸くんってなんなのよ」
理由もわからずに隆幸探しを手伝っていた明美もあきれて名簿を放り投げた。
「私の未来の旦那さん・・・」
そう言いながら、真紀子は一年一組の名簿を手に取って指で確認しながら名前を探し始めた。
「は?そのジョーダン面白くないんだけど。隆幸?幸隆じゃない?ほら、真田幸隆。って戦国時代か。」
明美の一人ボケツッコミを無視しながら、最後の名簿に目を通す。
「でも、どうしたの?どちらかというと陰キャの部類に入る真紀子が男探しだなんて」
「・・・・あ、あった。」
「え?真田幸隆?」
へらへらと笑っている明美に、
「この人ってどんな人か知ってる?」
「坂本隆幸」という名前を指さしながら、真紀子は興奮気味に明美に尋ねる。
「知らないよ。一年生でしょ。じゃ、早速見に行こうよ!」
「え?う、うん」
いざ、会いに行くとなると怖気づく真紀子の手を引き、明美は面白がりながら一年一組の教室に向かった。
「坂本隆幸くん、いるかな?」
一組の教室前、金髪のちょっと不良っぽい女の子に聞いてみると、
「あそこにいますよ、あの寝てる人です」
以外に柔らかい口調に安心しながらも、寝ている坂本隆幸を見つけた。
「わからないね。あれじゃあ。」
明美の言葉に、
「あの人、なかなか起きないんですよ。」
一年一組の不良少女は気まずそうに起きないエピソードを教えてくれた。
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