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『それ』はコンビニや銀行、金銭を扱う場所ではお約束の。
真っ直ぐレジに向かってきた。
そろそろ勤務終わりで引き継ぎも終わっていたわたしは、レジの整理を終わり、
いや、終わっていたけれど、たまたま『そこ』にいた。
フードを被ったお客さんはたまに見る。日除けのためとかジョギング中とか。けれど。
「いらっしゃいませ…」
「金を出せ」
目深にフードを被り、更に目出し帽をつけた、比較的小柄な男が、隠った声で低い声で呟くように遮った。
「えっ……」
咄嗟にやばい。と思った。
動かない。
体が。
痴漢に遭ったら声を出しなさい、というけれど。
いざ目の前にそれが来ると、声どころか、体が動かなくなる。
「金を出せ!早くしろ!!」
苛立った男が、サバイバルナイフを突き付け、レジに乗り上げた。
「ひっ……!?」
ひきつるような声しか出ない。
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