また今日も奴が来る【完結】

奴が来た

高校を卒業後、事務と販売職を経て今に至る。

一応地元だけれど、一人暮らしの家賃を払うためにフル勤務でアルバイト生活をしていた。

深夜は時給が割りといい。

来月２５歳になるというのに、１５０㎝の小柄で童顔。

真面目なだけが取り柄の、どこにでもいる普通の、むしろ日陰を好んで歩くタイプのいわゆる地味子。

地味なだけで特技もなく、いや、漢字だけは得意といってもいいか。言わせてください。

運動音痴で走れば足がつる。
成績も人並み。

だからせめて、漢字くらいは得意だと言わせてほしい。

「はーすっきりした。これと、煙草、５番の、ちょうだい」

「ありがとうございます」

缶コーヒーと煙草。どちらも銘柄は決まっている。これが奴のお決まり。

なんの愛想もなく無表情に応える。

もちろん、奴に対してだけ。
他のお客様には頑張って営業スマイルを惜しまない。