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「じゃあ、なんであいつは何も言わないんだ? 実際自分が疑われているんだ、犯人を名指ししてもおかしくないだろう」
「強請るつもりなんだろうよ、小豆畑を」
本当、クズだよなーとため息混じりに慎吾が言う。
「密室殺人、不可能犯罪にして小豆畑に恩義を着せ、犯行を黙っている代わりに金をよこせって、強請るつもりだったんだろう」
「クズダ!」
「クズすぎるな……」
巡査部長がしみじみとつぶやいた。
周りの警官も口々に同様のことを口走っている。
金持豪志、一体どれだけの人間に、ダメ人間だと思われているのだろうか……。一周回って、ちょっと会いたくなってきた。
「つーか、絶対あいつなんか屋敷からパクってるから、そっちも調べといてよ。あいつ、このまま野放しにしてたら、世の中の害悪だし」
「なんか、もう、豪志が犯人でいいんじゃねーか?」
「いや、本当に」
真面目に不真面目な内容で頷き合う、探偵と刑事。だが、まあ概ね私も同意する。
「と、まあ、資料見ただけの雑推理だが、大枠はこれで合ってると思うよ。あとは、裏づけ捜査頑張ってくれ」
「おい、裏をとってこい」
推理を黙って聞いていた警官たちが、慌てて動きだす。
なんだかんだで、ここでは慎吾は名探偵としてきっちり認識されているのだ。
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