第一章 九官鳥の場合

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「じゃあ、なんであいつは何も言わないんだ? 実際自分が疑われているんだ、犯人を名指ししてもおかしくないだろう」 「強請るつもりなんだろうよ、小豆畑を」  本当、クズだよなーとため息混じりに慎吾が言う。 「密室殺人、不可能犯罪にして小豆畑に恩義を着せ、犯行を黙っている代わりに金をよこせって、強請るつもりだったんだろう」 「クズダ!」 「クズすぎるな……」  巡査部長がしみじみとつぶやいた。  周りの警官も口々に同様のことを口走っている。  金持豪志、一体どれだけの人間に、ダメ人間だと思われているのだろうか……。一周回って、ちょっと会いたくなってきた。 「つーか、絶対あいつなんか屋敷からパクってるから、そっちも調べといてよ。あいつ、このまま野放しにしてたら、世の中の害悪だし」 「なんか、もう、豪志が犯人でいいんじゃねーか?」 「いや、本当に」  真面目に不真面目な内容で頷き合う、探偵と刑事。だが、まあ概ね私も同意する。 「と、まあ、資料見ただけの雑推理だが、大枠はこれで合ってると思うよ。あとは、裏づけ捜査頑張ってくれ」 「おい、裏をとってこい」  推理を黙って聞いていた警官たちが、慌てて動きだす。  なんだかんだで、ここでは慎吾は名探偵としてきっちり認識されているのだ。
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