第一章 九官鳥の場合

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「軽く言うけどな、それが一番面倒なんだよ。名探偵様がおっしゃっていたので、裁判にはなんねーからな」 「そりゃあ、事件を解くまでが探偵の仕事だからな。あとの手続きについてまで関与しないのが、名探偵の存在意義なんだよ」 「お前のそういうところがダメなんだよ。ちゃんと裏付けしないと、小鳥遊検事に文句言われるのは、こっちなんだからな」  小鳥遊検事は、なんの因果か慎吾が解決した事件を担当することが多い女性検事だ。彼女はドラマでいうと準レギュラーといったところだろうか。 「大丈夫だよ。本当に怒っている時の小鳥遊女史はわざわざ事務所にまで来て、俺に文句言って帰っていくから」 「全然ダメじゃねーかよ!」 「なんで謎を解明したのに怒られなきゃいけないんだろうなぁ。証拠がないと裁判が維持できないっていうのはまあ、わかるんだけど」  そう、私が見かけるのは怒っている彼女ばかりだ。どこか爬虫類めいたところがあって好きではない。今回は来ませんように……と心の中で祈っておく。 「まあ、今回は確かに茗ちゃんにさっさと片付けろ、って言われたから巻きでやったところあるしな。あと、キューの健康診断の時間も迫ってるし」 「この事件は動物病院よりも優先順位が低いのかよ」 「万が一、何か行き詰まることがあったら連絡してくれ。アフターサービスだ」  と、怠惰な慎吾にしては珍しいことを付け加える。それがサービスなのかは、甚だ疑問だが。 「じゃあ、キュー。病院行くか」 「ゴンベイ!」
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