あてがわれた婚約者

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いつもと変わらない午後、私は庭の縁側から空を見上げた。 もう夕方だというのに、空はまだ青を彩っている。陽の長い今の時期が私は好きだ。 寒い時期は嫌なことを思い出してしまうから…… 「葉月今度の日曜婚約者と食事会だ」 「え…‥」 早くに帰ることがない父が急に帰ってきたと思えば突飛なことを言った。 「蓮池グループの会長のお孫さんだ。これ以上葉月にいい相手はいない、感謝しろよ」 「はい……」 私は父に強く言えない。 それは昔からで、父は怖い人だと認識していたからだ。 「あなた、葉月はまだ高校を卒業したばかりですよ」 「そんなの関係ない」 母が口を挟むもバッサリきられるのはいつものこと。 「お母様、私は平気です」 「でも‥…」 「これは決定だ」 父が白と言えば白、黒と言えば黒。 我が家の誰も父にはむかえる人はいないのだ。 ただ一人、五つ上の姉の弥生を除いては。 彼女はこの窮屈な家が嫌で、政略結婚をさせられそうになった前夜出て行った。 それは三年前の寒い冬の事。 私は今でも“葉月諦めないのよ、幸せになって”という姉の言葉を思い出す。
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