彼の優しさ

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米倉さんは荷物を運びに来たのだろう。彼は段ボール箱を持っており、同じく蓮池さんも紙袋を両手に抱えていた。 「お噂通り、可愛らしい」 「え……? 」 米倉さんは口元を緩めて、私を見つめている。 噂とはなんのことだろう。 しかしすぐ、蓮池さんが強い口調で「米倉、早くそれ俺の部屋に持っていけ」と、言った。 「はいはい。共哉の部屋はどこ?」 私に対してとは違う、くだけた喋り方に驚いた。秘書とはこういうものなのだろうか。 「わかるだろう……」 「いや、家具は選んだけど、部屋に入るのは初めてだよ。なんなら、奥様に案内してもらおうかな……」 米倉さんが私を見つめたため、私は慌てた。 しかし、また彼は荒っぽい口調で「こい、こっちだ」と、靴を脱ぎ捨てるようにして、足を中へ進めた。 二人が彼の部屋に消えると、私はお茶くらい用意した方がいいだろうかと、思い立つ。 急いで珈琲を用意すと、ちょうどそれを注いだところで、二人が再び顔を出した。 私はすかさず、「あ、あの、珈琲を飲んでいかれませんか?」と、米倉さんに言った。 「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて、いただきます」 「あっはい、どうぞ」 「蓮池さんも、珈琲どうでしょうか?」 「あぁ……」 米倉さんにはソファにかけてもらい、珈琲のカップを差し出した。 すると、「旨い。とてもいい味です」と、褒めてくれたため、安堵する。 「あ、ありがとうございます」 「蓮池さんも、どうぞ」 蓮池さんは「あぁ」と、言っただけだった。 「奥様は飲まれないのですか?」 「えぇ、私は……」 「すみません、僕だけいただいて……」 米倉さんは、かなり年下の私に丁寧だった。 きっと、彼と同世代に違いない。 米倉さんは、蓮池さんのような涼しげな見た目でなく、エネルギッシュさを感じるような、とても濃い顔をしていた。
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