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とりあえずと、会場を抜け出した私は先ほど共哉さんが連れ出してくれた場所まで走った。
さらに暗くなった今、外には誰もいない。
同じ場所に座ると、石の椅子から伝わる冷たさが私の涙を誘った。
どうして、今になって知ってしまったのだろう。
どうして……
神様は意地悪だ。
もし初めに知っていたら、違ったかもしれないのに……
だって私は、彼への気持ちが変化してることに気づいてしまったから。
優しさを知ってしまった。
「ひどいよ……」
この結婚で満足しているのは父と彼だ。
父も彼もひどい。
きっと、義父母はなにも知らない。
優しい二人をこれから悲しませるのだろうか。
それに、自分が売りものの様に扱われて正直ショックだった。
母は知っていたのだろうか。
だから私を気にしていたのだろうか。
もうわからない。
落ちる涙はとても、抑えられない。
悲しくて冷たくて、たまらない。
だけどこれは現実なのだ。
蓮池葉月となってしまった私はもうあと戻りできない。
だからせめて今だけは、こうして泣いてもいいだろうか……
私は声をあげず、静かに泣いた。
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