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彼がお風呂からあがっても、やはりまだ不機嫌そうだった。
そんなお風呂上がりの彼だが、濡れた髪に涼しげな顔がマッチする。
怖い顔なのに、綺麗だと思った。
「なんだ」
「い、いえ……」
あまりに、見すぎた……
挙動不審な様子で、視線をさまよわせる私は不審だろう。
「今日は魚か」
「はい、太刀魚のムニエルです。お嫌いですか?」
宮前さんが冷蔵庫にストックしていてくれたということは、きっと彼は食べられるはずだと思ったのだが、どうだろう。
「嫌いじゃない」
なんとなく、いつもの彼だ。
ぶっきらぼうな言い方だが、怖いだけじゃない。
それとても、安堵した。
「髪は乾かさなくていいのですか?」
「構わない」
お風呂上がりの彼は、髪を固めていないため、若く見える。
「蓮池さん、髪の毛をおろすと印象が変わりますね」
「どう変わる?」
どうしよう、若く見えるなんて、絶対に言えない。
「す、素敵です」
そう答えるのが精一杯だった。嘘ではない。
だがその言葉は、彼を困らせてしまうことに、私は気づけないでいた。
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