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私は帰宅してすぐ、「共哉さん、今お風呂溜めますね」と、言った。
「あぁ」
昨日までは宮前さんが溜めていてくれたが、今夜から土日は毎回私がする仕事になる。
家に帰れば意識が現実に戻った。
私は浴室に行き、浴室の横に片付けてあるスポンジに洗剤をつけ、浴槽の中へ足を入れようとしたときだった。
「お前、風呂掃除したことあるのか」
急に後ろから彼に話しかけられ、驚いた。
身体のバランスが崩れ、浴槽へ前のめりに倒れそうになる。
「っおい……!」
しかし、彼が助けてくれたから、倒れることは間逃れた。
身体の後ろを彼に包まれている格好でいる。
「おい」
「す、すみません」
私は安堵したが、次にやってくる羞恥にたじろいだ。
浴室を洗うために、ドレスを脱いだが、今の私は薄手のキャミソール型のワンピース姿だ。
こんな姿を抱き留められるなんて、申し訳なく、恥ずかしい。
「だ、大丈夫です。私もう……」
私は慌てて離れようと身体を動かす。
しかし、共哉さんは「ちょっと待て、足を一度こっちに戻すぞ」と、言って、私の素足を持ち上げた。
「立てるか」
「はい」
それから、ゆっくりと足を下ろしてくれた彼は、私と身体を向き合わせた。
「……ったく」
呆れた様子に悲しくなるも、恥ずかしさの方が勝っている。
涙目になっている瞳を彼に向けた。
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