歳の差と距離

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「すみません、共哉さん……!」 下敷きになった彼の腕にこれ以上負担をかけぬようにと身体を急いで起こす。 「大丈夫ですか?」 「あぁ」 彼は上半身を起き上がらせ、座った状態になったがびしょびしょだ。 「すみません、本当に……」 彼は泡と水がスーツや腕に足、それに髪の毛にもついている。 私もだが、彼ほどではない。 「いや、いいよ」 「タオル、私タオル持ってきます」 浴室を出ようと立ち上がろうとしたが、彼に腕を引かれ止められた。 「共哉さん?」 「俺はもうこのままシャワーを浴びるから、お前は身体を拭けば大丈夫そうか?」 彼はたしかに、タオルを使って拭ける範囲じゃない。 それに比べ、私は足とスカートの下部が濡れているくらいだ。 「えっと……」 「中も濡れてるか?」 「い、いえ……」 中というのが下着を指しているのがわかり、思いきり首を振った。 同時に赤らむ顔はバレていないだろうか。 恥ずかしい…… 「そうか」 とても、申し訳ないことをしてしまった。 だからまた、私は謝罪をした。 「すみません」 「いいから、お前も早く拭けよ。それともお前も入るか?」 「え?」 私も入るとはなんなのか。 すぐにそれが理解できない。 すると、彼が僅かに口角を上げた。 「どうする、入るか?出るか?」 その顔はあまり見ない表情だ。私の胸が鳴った。
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