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どれくらいそうしていただろう……
そんなに時間は経っていない気がしたが、共哉さんの声にはっとした。
「おい、葉月上がったぞ。お前……身体拭いてないだろ」
彼は座ったままでいる私を呆れたように見下ろした。
「えっと、はい……」
「何してんだお前……風邪引きたいのか」
彼は怖い顔になりこちらに近づくと、私の腕を掴み立ち上がらせた。
思わず「キャッ……!」と、声をあげてしまう。
「ほら、風呂行くぞ」
なぜ彼はこんなに怒っているのだろう。
結構強い力で腕を引かれ、浴室へ連れてこられた。
「まだ溜まってないが、洗ってるうちに溜まるだろう。早く入れ」
「あ……」
彼は私の答えを聞かぬまま、浴室を出た。
どうやら、彼を怒らせたようだ。
どうしよう……
とりあえず共哉さんの言う通りお風呂に入ることにして、服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
浴びている間にお湯は溜まる。
浴槽に入ると、冷えた身体は温まり気持ちがいい。
しかし、彼は冷えていたはずなのに浸かれなかった
彼に、もう一度入ってもらうべきだ。
私は思い立ったことを伝えるために、浴室からリビングへ繋がるフォンのボタンを押した。
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