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「……おまっ……!」
「……はい?」
フォンの向こうの共哉さんは、言葉を詰まらせたような声を出した。
どうかしたのだろうか……
「共哉さん……?」
もう一度声をかけると、彼の低い声が響いた。
「……お前俺に入って欲しいのか?」
「え、もちろんです……」
共哉さんは、あんなに早く上がってきたのだ。
たくさんの湯を溜めて、私しか入らないなんてなんだか申し訳なく感じる。
二番風呂になってしまうが、そこは許して欲しい。
「もちろんって、お前……」
「はい?」
「わかってんのか?」
「え、えぇ。とても、気持ちいいですよ」
私は少し身体を動かした。
湯の跳ねた音がしたが、彼にも届いているだろう。
「本気、なの……か?」
「えぇ」
彼は、なんだか歯切れが悪い。
その理由は私であるが、まるでわかっていなかった。
「俺は……」
「何でしょうか?」
「俺はあとで入る」
「あっ、はい……」
よかった……
私は入ってくれることに安心する。
「じゃあな」
「あ……」
しかし、ホッとするとすぐ、彼に通話を切られてしまった。
なんだか少し寂しい。
だが、浴室から彼の声を聞けたことは嬉しいことだった。
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