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義父母にどう説明したのかは、わからなかったが、彼が私のもとへ戻ってきたのは早かった。
涙は止まりかけていたけれど、きっと私の顔はぐちゃぐちゃだ。
私はうつむいて彼のあとに続いた。
車に乗って帰宅する私たちだが、車内はずっと沈黙だった。
どちらからも話すことはない。
いつものことと言えばいつもだ。
だが、今日は空気が重たい。
「腹へったろ」
「え……?」
どれくらい走っただろうか、先に沈黙を破ったのは彼だった。
「何も食べてないだろう」
「はい……」
すっかり、それを忘れていた。
しかし、思い出すと急に空腹感を覚え始める。
「店に寄るか?」
「え?」
彼と店に入るなんて初めてのことである。
「馴染みの店がある。個室だから気を遣わなくていいところだ」
それは私のひどい顔に気遣ってくれているのだろうか。
「何でもいいな?」
「はい」
私は彼と初めて外食することになった。
彼はすぐに予約をとるために、車を路肩に停め、車を降りた。
別に車内でもかまわないのにと思ったが、とても話しかけられなかった。
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