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彼に入ってもらいたいため、ほどよく身体が温まると、私は浴室を出た。
髪は乾かさず、身体を乾かしたあと、彼のほうへ行く。
「共哉さん……」
彼はなぜかソファーにも椅子にも座らず、立ったままでいた。
「なんだ?」
私を見ると、彼は顔をしかめた。
「お風呂、いただきました」
「あぁ、俺も入る」
「はい、ごゆっくり……」
「お前は早く髪を乾かせよ、風邪引くぞ」
「え、あ、はい」
彼は浴室へと消えた。
私の心配をしてくれた。
ぶっきらぼうな物言いだが、優しさしか感じない。
「私、共哉さんが……」
好き……
彼のことが好きなんだと、実感する。
熱くなる胸を、強く押さえた。
共哉さんの気持ちが少しでも私に向いたらいいのに……
そのためには、妻の仕事をきちんとこなす必要がある。
風呂掃除にも慣れなければいけない。
共哉さんにとって、居心地のいい環境を作ることを努めよう。
私は強く思ったのだった。
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