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「葉月、おいで」
私はお茶をのせたトレイを手に持っていたが、とりあえず、テーブルにそれを置いて、彼の横に立った。
目の前には山本さんがいる。
背が高い彼女を、見上げた。
やはり彼女は近くで見ると、綺麗だった。
山本さんに見つめられ、変な緊張が走る。
「妻の葉月です。米倉から聞いてると思うが、葉月はまだ学生だ。そこを考慮して、教えていただきたい」
「それは承知しております。葉月さん、山本涼子です。よろしくお願いしますね」
彼女の優しい声が、私を急かす。
「葉月です。よろしくお願いいたします」
しかし、私からは小さな声しかでなかった。
「葉月、山本さんには週三で来てもらう予定だ。それでいいか?」
私は共哉さんに頷いただけで、無言でいた。
彼はそれからは、山本さんと契約の話を進めていってくれた。
さらに、共哉さんと山本さんは互いの連絡先を交換する。
それは必要なことであるのだろうが、私は共哉さんの番号をまだ知らない。
私も知りたい……
だから、とても悲しかった。
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