事実と好意

7/19
前へ
/38ページ
次へ
コースの料理はどれも美味しくて、すべて食べ終えれると、満腹になった。 「美味しかったです、お腹いっぱいです」 「そうか……」 しかし、彼はすっきりしない表情を見せた。 「とも、やさん……?」 「なんだ」 すると、そのとき「失礼します。デザートお持ちしました」と、店の人が部屋に入ってきた。 それからすぐ、目の前に皿が置かれる。 「ショートケーキ…」 それは和食に似合わぬ、ショートケーキだった。 「そうです。こちらは豆乳を使っております」 スタッフが答えるが、見た目は普通の生クリームの色と同じだ。 「美味しそう……」 まさかこんな場所でケーキを食べられるなんて思わなかった。 気分が単純にも、明るくなる。 彼は「食べられるか?」と、心配そうに私を見つめた。 「はい、ショートケーキ嬉しいです」 嬉しさが顔に出てしまう。笑顔になると、共哉さんは、口の端を僅かに上げた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

352人が本棚に入れています
本棚に追加