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昨日に引き続き彼と出掛けられるとは思ってもなかった。
自分の部屋のドレッサーの前で、自身と見つめ合うが、納得できる姿ではない。
「これじゃ、妹にしか見られないよね……」
目の前にいる見慣れた私の姿にため息が出た。
先はどの山本さんの姿がちらつく。
しかし、私は私で、どうしようもない。
化粧道具は一応持っているが、あまり使わないため上手くできる自信はない。
そのうえ急に化粧なんてして出たら、彼にどう思われるだろうか。
それも心配である。
私は悩んだあげく、いつも通りに日焼け止めに軽くパウダーをはたいただけにした。
小さなやや厚めの唇には、香りのいい色付きリップを塗った。
少しはマシに見えたらいい。
どこに行くのかわからないため、今履いていたものより、足首の上でカットされた細みの黒パンツに履き替えた。
髪の毛をハーフアップにし、鏡の中の私を見つめた。
これで少しは大人に見えますように……
私は息を吐き、部屋を出た。
それは共哉さんと同時だった。
「準備はいいか?」
「はい」
彼は先ほどと同じ白のシャツにグレーのパンツを着ていた。
単色な色合いでシンプルなのに格好いいのは共哉さんだからだ。
隣に並んで変ではないだろうか……
密かに確認しながらも、側に足を向けた。
「じゃあ行くか」
「はい、お願いします」
二人きりのお出掛けの始まり……
何だか胸がドキドキしてきて、下まで降りるだけなのに心臓がうるさかった。
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