大人希望

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彼が足を進めた先は、キッチン横にあるテーブル席だった。 すべてがしきられてるわけではないが、この席は柱で上手く区切られているため、周りからの視線に邪魔されない。 彼が好むだけあり、落ち着く席だ。 窓からは私の通う大学が見える。 「共哉君、こちらが奥さん?」 私たちが腰を下ろすと、お冷やを持った先ほどの女性が言った。 「あぁ」 私が奥さんと、知っていることに驚きだ。 妹や、従妹に間違えられなく、ホッとする。 「はじめまして、伊藤美晴です。私、共哉君の従姉なの」    私はハッとし、無礼のないようにと、頭を下げた。 「は、はじめまして。つ、つ、妻の葉月です」 「葉月、そんなに畏まる相手じゃないぞ」 すると、彼女は「そうよ、普通にして」と、言った。 結婚式を挙げてない私だから、彼の親族をよく知らない。 彼女は義母の姉の娘だと言った。 「蓮池家とは関係ないから畏まらないで」と、言って笑う彼女に好感を持った。 この店は彼女が経営しており、弟はシェフらしい。姉弟経営とは仲がいいと、私は感心した。 スタッフは美晴さんしかいないため、忙しそうだ。 「共哉君、葉月さん、決まったら呼んでね」 他の客から呼ばれた彼女は慌ただしく、離れて行ってしまった。 初めて会う彼の親戚だ。 なんとなく、彼と近づけた気がして、先ほどの気持ちとは反し嬉しさが込み上げた。
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