大人希望

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「君、あそこの大学生らしいね」 「え、えぇ…」 彼が窓の外の大学を指した。 「まだ一年でしょ、共哉君より僕の方が歳近いよ。君の5つ上」 「そ、そうですか」 なんと言えばよかっただろう。少しの沈黙に、目を泳がせてしまう。 すると、彼に吹き出されてしまった。 「可愛いね、慣れてないんだ男と話すの」 「え、えぇまぁ……」 まず男性以前に知らない人と話すことに慣れない。 しかし、それは言わないでおいた。 「へぇ、そんな子が結婚ねぇ。共哉君が羨ましいな」 それは彼の本心だろうか。急に真意が知りたくなった。 きっと、山本さんを見たことをひきずっているせいだ。 「羨ましいですか……?」 「え?」 「本当に羨ましく思いますか?私みたいなお子さま……で?」 私は真剣な顔をしていると思う。 だって、彼は目を見開いて、表情をひきしめたから。 「あぁ、もちろん。若いってだけで女は武器になるだろ」 「そうでしょうか?私は大人になりたいんです」 「大人って共哉君に釣り合いたいってこと?」 「はい、彼に、大人に思われたい……」 彼の意見を聞きたくて言葉を待つ。 しかし、それは叶わなかった。 「晴彦、お前仕事ほっぽりだすなよ」 「と、共哉さん……!」 私は焦った。 今の話、聞かれてないだろうか……   「共哉君、いらっしゃい」 従弟は晴彦さんというのか。 今さら、彼の名前を知れた。
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