大人希望

15/19
前へ
/40ページ
次へ
「あぁ、忙しそうだな」 「おかげさまで忙しいよ。姉貴と二人じゃ、きつくなってきたよ。バイト募集かけようかと思ってるくらい」 「へぇ、良かったじゃないか」 「まぁね」 二人は仲がよさそうだ。 共哉さんの砕けた様子を私は見つめる。 「晴彦、こいつは……」 「葉月ちゃんでしょ、さっき聞いた。可愛い奥さんじゃん」 可愛いなんて褒め言葉を彼の前で言われ、恥ずかしくなる。 「葉月、こいつは従弟の晴彦だ。美晴の弟でさっきも聞いたと思うがここのシェフだ」 しかし、共哉さんはスルーだった。 期待していたわけではないが、全く動じないそれに少しだけ気持ちが沈む。 「よ、よろしくお願いします」 「うん、よろしく」 晴彦さんには子供っぽい質問をしておいて、今この場で互いによろしくなんて言うのも変な気もしたが、私も頭を軽く下げた。 「共哉君いいねぇ、こんなに若い妻をもらえて」 「お前も落ち着いたらどうだ?」 「いや、僕はまだ……。まずは姉貴からだからね」 「それもそうか」 「うわ、言っちゃおう姉貴に」 「お前が言ったんだろう先に」 楽しそうに笑う彼の顔はあまり見ないものだ。 私には新鮮に映り、こういう表情も好きだと思えた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

364人が本棚に入れています
本棚に追加