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「あぁ、忙しそうだな」
「おかげさまで忙しいよ。姉貴と二人じゃ、きつくなってきたよ。バイト募集かけようかと思ってるくらい」
「へぇ、良かったじゃないか」
「まぁね」
二人は仲がよさそうだ。
共哉さんの砕けた様子を私は見つめる。
「晴彦、こいつは……」
「葉月ちゃんでしょ、さっき聞いた。可愛い奥さんじゃん」
可愛いなんて褒め言葉を彼の前で言われ、恥ずかしくなる。
「葉月、こいつは従弟の晴彦だ。美晴の弟でさっきも聞いたと思うがここのシェフだ」
しかし、共哉さんはスルーだった。
期待していたわけではないが、全く動じないそれに少しだけ気持ちが沈む。
「よ、よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
晴彦さんには子供っぽい質問をしておいて、今この場で互いによろしくなんて言うのも変な気もしたが、私も頭を軽く下げた。
「共哉君いいねぇ、こんなに若い妻をもらえて」
「お前も落ち着いたらどうだ?」
「いや、僕はまだ……。まずは姉貴からだからね」
「それもそうか」
「うわ、言っちゃおう姉貴に」
「お前が言ったんだろう先に」
楽しそうに笑う彼の顔はあまり見ないものだ。
私には新鮮に映り、こういう表情も好きだと思えた。
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