大人希望

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「はい……」 私が素直に頷くと、涼しい瞳に見つめられた。 「お前はすぐ謝るから、もっと楽にしろよ」 「あっ、はい」 たしかに、“ごめんなさい”ばかりではいい気分になれないだろう。 だから素直に気をつけようと思った。 「あの、ありがとうございます。ご指摘してくださって」 「いや、お前は本当にすれてないな」 「え、すれて……ない?」 すれてないとは、まるで思春期の子供みたいな扱いのようでびっくりする。 「お前みたいな女はじめてだよ」 「……」 それは褒め言葉なのだろうか、それとも…… 「どういう意味ですか?」 きっと、私の表情はひどく固い。 「……ん?」 「はじめてって……」 気になって追求してしまう。 すると、表情を緩めた彼は口を開いた。 胸が、緊張でドキドキした。 「若さもあるのかな……。葉月みたいな裏表がない女に会ったことがない」 そんなことは嘘だ。 私だって、裏表がある。 山本さんに嫉妬した心は醜い。 それは裏表にならないのだろうか…… 褒められているはずなのに、あんまり嬉しくない。 きっと大人を意識し過ぎているせいだ。 「そんなこと、ないです」 「いや、そうだろう」 それは、オムライスが出てきて、それを食べているときまでも、モヤモヤしていた。
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