キスの理由

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共哉さんはしばらくして、美晴さんを呼んだ。 空気はもう、重くない。 「美晴、コーヒーもらえる?葉月は……」 共哉さんの瞳が迷うようなものに変わった。 すると、美晴さんは「ケーキにアイス、パンナコッタがあるわよ」と、言った。 どうやら、共哉さんは私のデザートを注文してくれるようだ。 「ケーキの種類は?」 「チーズケーキよ」 その質問は私がショートケーキを好きだからだと思っていいのだろうか…… だって、アイスの種類は聞かなかった。 少しだけ弾む心に、彼の視線がプラスして更に胸がドキドキした。 「葉月、どうする?」 「あっ、えっと……」 「おすすめはチーズケーキよ。なかなか評判いいの」 チーズケーキは好きだし、おすすめと、言われると、私は弱い。 「じゃあチーズケーキをお願いします」 「あら、いい子ね素直で。可愛い奥さん、ね、共哉君」 ここでこんなフリは、止めて欲しい。 「まぁな。ほら、持ってこいよコーヒー」 それは否定していないと、とってもいいのだろうか…… 私は、緩みそうになる頬を両手で押さえた。 「何してるんだ、早く食えよ」 「あ、はい」 急に冷たくなる声に、頬の熱は冷める。 ぶっきらぼうな物言いは、彼の照れ隠しだったらいいのに……
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