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「……まぁまぁだな」
「へ?」
「ケーキだよ」
「……あぁ」
ケーキの感想に、ほんの幾分かドキドキが治まる。
「お、美味しいですよ。私こんなの作れないです」
「そうか?葉月なら作れそうだが」
「そんな、まだまだです……」
こんな美味しいものを作れるわけがない。
「そうでもないと、思うが……」
私は恥ずかしくなり、激しく頭を横に振る。
すると、髪の毛に生クリームがついてしまった。
「あ……」
しまったと、思ったときにはもう遅い。
「待ってろ、今おしぼりもらうから」
しかし、私は両手を振った。
「大丈夫です。お手洗いで洗ってきます、すみません」
「おい……!」
私は、慌てて立ち上がった。
少しの間、共哉さんから離れたかったからだ。
トイレの鏡には思いきり髪の毛にクリームをつけた私が映っている。
恥ずかしい……
水道水で、そこを濡らすと、すぐに取れた。
もう一度、鏡を確認するが、今度は赤い顔が目に入る。
私は心を落ち着かせようと、何度か深呼吸をした。
トイレから出た後、すぐ、私は「葉月ちゃん?」と、呼ばれた。
「児玉さん……」
私が苦手な児玉さんとの遭遇、まさかここで彼と会うなんて思わなかった。
私の心臓は違う意味でドキドキし始めた。
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