364人が本棚に入れています
本棚に追加
「こ、児玉さん……!」
私は驚くが、児玉さんは笑顔だった。
「結構前から店にいたのに葉月ちゃん見つけられなかったから、どこにいたのかなって気になってさ」
「そ、そうなんですね」
「そう。しかし、ここはいい場所だね。これのせいで周りから見えない」
壁になってる柱を、彼は叩いた。
彼はにこやかな顔をしながら、共哉さんを見つめた。
「はじめまして、僕は葉月ちゃんと同じ大学の児玉義也といいます。葉月ちゃんとは彼女が吹奏楽サークルの見学に来てくれたときに知り合いました」
「こ、児玉さん……」
私は、共哉さんに自己紹介を始める彼に焦り始める。
「どうも」
「お兄さんですか?」
児玉さんの質問のあと、共哉さんと目が合う。彼の眉が動いたことに気がついた。
「こ、児玉さん……」
「ん?家族と来てるって言ってたから、葉月ちゃん」
「えっとそれは……」
「ん?カッコいいお兄さんだね。葉月ちゃんも可愛いし、美男美女だ」
ち、違う……
「こ、児玉さん、あの……」
否定したい。
結婚してることを伝えようと思った。
だが、それは叶わなかった。
「義也、そろそろ行くぞ」
間の悪いタイミングで仲間らしい男が、私たちの間を割った。
「あぁ、ごめん。ごめん葉月ちゃん、もう時間だ」
「あ、えっと」
「また大学でね。お兄さんお邪魔してすみませんでした。失礼します」
彼は誤解したまま去っていった。
お兄さん……
共哉さんはどう思っただろう。
彼を盗み見つめると、馴染みの無表情でコーヒーを飲んでいる。
でも、何も発っさない彼が妙に怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!