キスの理由

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「こ、児玉さん……!」 私は驚くが、児玉さんは笑顔だった。 「結構前から店にいたのに葉月ちゃん見つけられなかったから、どこにいたのかなって気になってさ」 「そ、そうなんですね」 「そう。しかし、ここはいい場所だね。これのせいで周りから見えない」 壁になってる柱を、彼は叩いた。 彼はにこやかな顔をしながら、共哉さんを見つめた。 「はじめまして、僕は葉月ちゃんと同じ大学の児玉義也といいます。葉月ちゃんとは彼女が吹奏楽サークルの見学に来てくれたときに知り合いました」 「こ、児玉さん……」 私は、共哉さんに自己紹介を始める彼に焦り始める。 「どうも」 「お兄さんですか?」 児玉さんの質問のあと、共哉さんと目が合う。彼の眉が動いたことに気がついた。 「こ、児玉さん……」 「ん?家族と来てるって言ってたから、葉月ちゃん」 「えっとそれは……」 「ん?カッコいいお兄さんだね。葉月ちゃんも可愛いし、美男美女だ」 ち、違う…… 「こ、児玉さん、あの……」 否定したい。 結婚してることを伝えようと思った。 だが、それは叶わなかった。 「義也、そろそろ行くぞ」 間の悪いタイミングで仲間らしい男が、私たちの間を割った。 「あぁ、ごめん。ごめん葉月ちゃん、もう時間だ」 「あ、えっと」 「また大学でね。お兄さんお邪魔してすみませんでした。失礼します」 彼は誤解したまま去っていった。 お兄さん…… 共哉さんはどう思っただろう。 彼を盗み見つめると、馴染みの無表情でコーヒーを飲んでいる。 でも、何も発っさない彼が妙に怖かった。
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