364人が本棚に入れています
本棚に追加
私はとりあえずと、ケーキを口にした。
あんなに美味しいと感じたケーキは美味しいはずなのに、焦る感情が邪魔をするせいで最初ほどゆっくり味わえない。
それをなんとか食べ終えると、美晴さんが来てくれたことで、空気が少し和らいだ。
「どうだったかしら?ケーキ……」
「美味しかったです。ありがとうございましたご馳走さまでした」
「あら、それはよかった。共哉君、コーヒーのおかわりは?」
共哉さんは無表情のまま首を横に振った。
「あら、そう。もう帰る?」
「あぁ」
「そうよね、新婚さんだもんね」
しかし、今の私たちの間に甘い空気はない。
それでも私たちは同じ家に帰らなくてはならない。
晴美さんには「また来てね」と、言われ、晴彦さんには、「葉月ちゃん、バイトいつでもOKだからね」と、言われ、笑顔で二人に見送られた。
店を出ると、何も話さないまま車に戻る。
「ご馳走さまでした」と、お店で伝えたが、彼は頷いてくれただけで、目も合わなかった。
怒らせた……
私はひどく後悔していた。
「あいつか?前に電話してきたのは?」
車に乗り込み、二人の空間になると、ようやく彼が口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!