キスの理由

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私はとりあえずと、ケーキを口にした。 あんなに美味しいと感じたケーキは美味しいはずなのに、焦る感情が邪魔をするせいで最初ほどゆっくり味わえない。 それをなんとか食べ終えると、美晴さんが来てくれたことで、空気が少し和らいだ。 「どうだったかしら?ケーキ……」 「美味しかったです。ありがとうございましたご馳走さまでした」 「あら、それはよかった。共哉君、コーヒーのおかわりは?」 共哉さんは無表情のまま首を横に振った。 「あら、そう。もう帰る?」 「あぁ」 「そうよね、新婚さんだもんね」 しかし、今の私たちの間に甘い空気はない。 それでも私たちは同じ家に帰らなくてはならない。 晴美さんには「また来てね」と、言われ、晴彦さんには、「葉月ちゃん、バイトいつでもOKだからね」と、言われ、笑顔で二人に見送られた。 店を出ると、何も話さないまま車に戻る。 「ご馳走さまでした」と、お店で伝えたが、彼は頷いてくれただけで、目も合わなかった。 怒らせた…… 私はひどく後悔していた。 「あいつか?前に電話してきたのは?」 車に乗り込み、二人の空間になると、ようやく彼が口を開いた。
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