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「……お前」
すると、彼が躊躇いがちに口を開いた。
「嫉妬って……妬いたのか?」
「……え?」
私は彼を見上げる。
そこには彼が驚いたような顔をしていた。
「お前俺を……」
何か言いたそうな彼から、続く言葉を待つ。
しかし、それはなかなか届かない。
「共哉さん、本当にすみませんでした。私、共哉さんにも山本さんにも米倉さんにも、失礼な態度取ってしまって、本当に申し訳ないです」
共哉さんの表情を見て、ようやく落ち着いてきた。
私は、頭を下げた。
「別に失礼な態度なんて取ってないだろ。大丈夫だ」
彼の優しいところに触れ、また惹かれていく胸を静かに押さえた。
「共哉さん、ありがとうございます……」
「礼を言われることもしてないが」
「……すみません」
「いや、謝る必要はない」
「あ、ありがとうございます」
「別に礼はいい」
同じことを繰り返していることに気づく。
そのことが、おかしくて泣きたかった気持ちが引いていく。
それは彼も同じだったのか、無表情が少し崩れた。共哉さんの柔らかくなった表情を見て、私は嬉しくなった。
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