大人希望

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共哉さんは平日、リビングにいることはあまりない。 だから今日ももちろんそうだろうと、思っていた。 「共哉さん、お茶のおかわり要りますか?」 「あぁ、もらえるか?」 「はい」 しかし今日は彼は、家にいると宣言してから、ソファーに座り新聞を読み始めた。 共哉さんは多種類の新聞を取っているようだ。 真剣な顔で、次々と読んでいく姿はカッコいい。 「すごいですね」 私はつい、お茶をいれた際、彼に話しかけてしまった。 「ん……?」 「こんなにたくさん。頭がパンクしちゃいそう……」 彼は私を見て、わずかに笑った。 「あぁ、一応頭に入れておいた方がいいからな」 「お仕事に役立つのですか?」 「まぁ……葉月は新聞なんて読まないだろ?」 私は、恥ずかしくも頷いた。 「はい……」 「最近では、ネットでニュースが見れるしな」 機械音痴な私は携帯やパソコンもそこまで扱わない。 だが周りはきっとそうだろう。 若いと特に、そうだと思われる。 しかし、共哉さんに若者扱いされているようで嫌だった。 「わ、私も新聞読みたいです」 「え?」 彼の隣に許可なく腰を下ろしてしまった。 急に座るには近い距離である。 しかし、そんなことを気遣えないくらい余裕がない私は子供なのだ。 「読んでもいいですか?」 大人は彼に近づきたい。 私は大人ぶって彼の瞳を覗き込んだ。
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