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「別にお前は読む必要のないものなんだ。テレビをつけてもいいんだぞ」
彼は私が暇だと思ったに違いない。
「テレビはいいです」
急に自分の行いが恥ずかしくなり、そのせいで、目を合わせられない。
「そうか」
「はい」
しばらくの沈黙のあと、彼の手が頭から離れた。
寂しいなと感じたと同時にその手が顎に触れた。
私の顔が持ち上げられた。
「葉月、昼飯食いに出掛けるか?晩御飯の買い物もしたいだろ?」
強引に視線を合わせられる。
表情はいつも通り涼しいのに、視線が温かく感じるのは気のせいだろうか。
しかも、彼からのお誘い……
休日のランチ、それはデートのような気もする。
「はい」
共哉さんはゆっくりしたいに違いないなんて、思っていた感情は一気に吹き飛んだ。
私は大きく肯定してしまう。
今の、私の目はきっと嬉しそうに輝いているだろう。
彼は優しく笑んだ。
私は子供っぽいかもしれないが、さらに微笑んだ。
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