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それなのに、なぜか掴まれた手首はそのままだ。
彼は、私の膝の上にそのまま置いた。
手首を握っていた彼の手は、今度は私の手に重なる。
それが強めに握られたため、さらにドキドキする。
運転中で危ないと思うのに、スムーズに進む車に何も言えない。
いつまでこうしてるのだろう。
離せないでいる手……
すると、信号待ちでようやく車が止まり、彼がこちらを見た。
私は共哉さんを見つめていたため、彼の茶色の瞳と視線が絡む。
深い色に吸い込まれそうな、感覚を感じた。
「温いな、葉月の手は」
「と、共哉さんは冷たい……」
彼の手はとても、冷たい。
「あぁ」
「冷たくて気持ちいいです」
熱くなった身体に彼の手は心地よく感じた。
「俺も温まっていいよ」
体温を感じ合っているこの状況が、恥ずかしくなってくる。
「だからこのまま温めてくれ」
共哉さん、離す気はないんだ……
このまま……
私は嬉しく思うも、心配にもなった。
「危なくないですか?」
「安全運転で帰るよ」
そう、言われてしまえばまた何も言えない。
そのまま信号は青になり、車は走り出す。
手はしっかり繋いだまま……
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