見え隠れする感情

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食べさせるとは、どういうことだろう…… 「えっと、私が……ですか?」 「あぁ」 何ともないような言い方の彼に、戸惑う。 「えっと」 「ほら、くれよ」 彼は前を向いたまま、小さく口を開けた。 これは……待たれている…… 「は、はい」 私は急いで包装を破り、中身を取り出し手に取った。 「ど、どうぞ」 それを彼に向けて手を伸ばす。 口元に近づけるキャンディ、手が震える。 「それじゃ届かない」 たしかに、そう。 だが、口を共哉さんから近づけてほしい。 しかし、言えない…… 「ほら、くれよ」 先ほどより、彼の口が大きくなった。 「は、はい。失礼します……」 私は思いきって彼の口の中に入れた。 するとキャンディを掴んでいた親指、人差し指までもが、食べられたのだ。 すぐに手首を、彼の手に掴まれる。 「と、共哉さん……」 私の二本の指は舐められる。 身体が一気に熱くなった。 どうして…… 「ん、甘いな」 彼は口から指を離して、平然と言うのだ。 「と、共哉さん……」 「ありがとな」 「い、いえ……」 いきなりのことに、とても驚いた。 まだ心臓はドキドキと、音を立てている。
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