見え隠れする感情

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共哉さんは白の外国車の後部から降り、私を見据えた。 一歩一歩と、私に近づく彼に胸の鼓動が跳ねた。 「共哉さん……」 共哉さんは、朝、家で見たダークグレーのスーツを纏っている。明るいお日様の下で見ても、彼はカッコいい。 仕事のときの髪型である、オールバックも似合っている。 「葉月、待たせたな。おいで」 「あっはい」 彼はためらいもなく、私の手をひいた。 その仕草に胸の胸はさらに高鳴った。 彼は後部のドアを開け、乗せてくれた。 すぐに手は離れたが、なんだか少しだけ寂しく感じる。 運転席には米倉さんがいる。 私は米倉さんに「こ、こんにちは」と、言って、頭を下げた。 「こんにちは奥様。お待たせしましてすみません」 「い、いえ、そんな……」 「米倉、もういいから出せよ」 「はいはい」 共哉さんは急かすように、車を出させた。 本当に急用なのかもしれない。 「あの、急用が入ったのですか……?」 彼の顔を見つめると、睨まれてしまった。 「お前いくら友人の兄とはいえ、男に送らせるってのはどうなんだ?」 問いの答えとはあきらかに違うものに、私は首を傾けた。 「どうして崎田を呼ばなかった?」 「え、えっと……」 先ほどより、彼の表情は険しい。いったいどうしたのか…… 「お前は非力なんだぞ。男と二人になりやがって……何かあったらどうするんだ」 私にはますますわからず、困る。 「ったく。近くにいたからよかったものの……」 何から聞くべきだろう。 私は、彼を見つめつつ、頭の中を整理する。 「崎田から報告受けたときは驚いた」 崎田さんはなんて報告したのだろうか。 私の疑問は心の中で揺れる。
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