一つ大人に

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私は、彼が注いでくれた水を一気に飲んでしまった。 すると、彼は空になったグラスまでも、キッチンへ戻してくれた。 「髪濡れてる、暑いか?」 「はい。見苦しくてすみません」 横着した見苦しい姿を、彼に見せてしまい、恥ずかしい。 「別に見苦しくない。俺もタオルドライだしな」 たしかに、彼はそう。 だけど、それはさすがに言えなかった。 「ほら、貸せ」 「え?」 私は彼にいきなりバスタオルを取られた。 「こうしたら乾くぞ」 何をするのかと思えば、背の高い彼は私の頭をバスタオルで包んだ。それからすぐ、その手をタオルごと、動かしはじめる。 「え、わ……」 私は驚き、変な声をあげる。 彼は少し笑って「しかし、あれだな……」と、呟いた。 あれとはなんだろう…… 私は不思議に思い、首を僅かに傾けた。 「子供にしてやってるみたいだな」 子供…… たしかに子供の髪を、親が拭くイメージがこの格好にはある。 別に嫌なことを言われたわけではない。 でも、引っかかる。 私は何も答えることができなかった。 しかし、彼は私が無言でいることに、乾かしてくれることに夢中で気づかない。
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