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「葉月、今日からフルート講師が来るからな。帰りは崎田に連絡しろよ」
「あっ、はい」
色々なことがありすぎて忘れていたが、その予定だったと思い出す。
「もしどこか寄るなら俺にも連絡入れろ」
昨日友梨香の兄に甘えてしまったからだろう。
「あっ、はい」
彼に心配かけたくない。今日の講義は昼までだが、真っ直ぐに帰ろうと決めた。
でも、帰ったら宮前さんがいる。
そうでなくても、共哉さんは気を遣い、フルート講師が来る日は長くいてもらうようにしてくれた。
今朝は本当に恥ずかしかった。
気恥ずかしい気持ちで宮前さんの作った朝食を食べ、共哉さんと二人で家を出たとき、私は彼女の顔を見れなかった。
家に帰るのが恥ずかしい……
今、私は、大学まで共哉さんに送ってもらっている。
隣の彼はやはりいつも通り涼しい顔をしている。
「本当に遠慮せずにかけろよ。仕事で出られないときもあるが、米倉が代わりに出るから」
「あっ、はい」
私の返事に満足したのか、彼の手が頭に乗る。
その手に撫でられると、胸の奥が強く締まった気がした。
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