本音と再会

2/20
388人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「葉月、今日からフルート講師が来るからな。帰りは崎田に連絡しろよ」 「あっ、はい」 色々なことがありすぎて忘れていたが、その予定だったと思い出す。 「もしどこか寄るなら俺にも連絡入れろ」 昨日友梨香の兄に甘えてしまったからだろう。 「あっ、はい」 彼に心配かけたくない。今日の講義は昼までだが、真っ直ぐに帰ろうと決めた。 でも、帰ったら宮前さんがいる。 そうでなくても、共哉さんは気を遣い、フルート講師が来る日は長くいてもらうようにしてくれた。 今朝は本当に恥ずかしかった。 気恥ずかしい気持ちで宮前さんの作った朝食を食べ、共哉さんと二人で家を出たとき、私は彼女の顔を見れなかった。 家に帰るのが恥ずかしい…… 今、私は、大学まで共哉さんに送ってもらっている。 隣の彼はやはりいつも通り涼しい顔をしている。 「本当に遠慮せずにかけろよ。仕事で出られないときもあるが、米倉が代わりに出るから」 「あっ、はい」 私の返事に満足したのか、彼の手が頭に乗る。 その手に撫でられると、胸の奥が強く締まった気がした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!