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彼と大人な関係になった翌朝、昨晩の熱から、一気に現実に引き戻される。
いつもと変わらぬ、朝だ。
ただ少しだけ違うのは私がいつもより早く起きたということ。
慣れない素肌でいる感触と、鈍い痛みが早起きをさせた。
それでも普段通りに、ドアの向こうには宮前さんがいるはず。
この状況、絶対に見られてはダメだ。
私は彼を起こさぬよう腕の中から抜け出そうと、静かに腕を持ち上げる、すると、すぐ上から彼の声がした。
「おはよう」
一瞬、心臓が止まった。
「お、おはようございます」
もしかすると、今の状況の方が昨晩より恥ずかしいかもしれない。
高まった熱で溶かされていた脳が今は正常でいる。思わず彼から距離を取った。
「なに、逃げてんだ?」
だが、すぐに閉じ込められてしまう、不機嫌な声と共に……
「……と、共哉さん、き、着替えなきゃ、私……」
夜は人を開放的にさせるのだろうか、
同じ状況でも朝の今の方が、素肌同士という事実にどうしようもない羞恥心が沸き上がる。
「ん?まだ早いだろ、もう少しこのままでいいだろう」
またも不機嫌な声を出す彼に私はたじたじだ。
「そ、それでも、宮前さんが……」
彼女が気になってしかたがない。
「大丈夫だ、この部屋は防音だ」
「……」
それは私だって知っている。
けれど、堂々といるのも気が引けるし、戸惑う。
それなのに、彼は昨夜のことを思い出させる言葉を放った。
「それよりどうだ?だるいか?今日は休んだらどうだ?」
身体のことを気遣うから、私は恥ずかしくなった。
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