想いの確認

5/19

399人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
私は、胸にドキドキを抱えつつ、宮前さんと顔を合わせて、ほんの少し朝食を口にしてから、大学へ向かった。 車の中では崎田さんに何か言われるんじゃないかとヒヤヒヤしたりもした。 かなりの疲労感を伴いながら教室に行くと、笑顔の友梨香が手を振ってくる。 「おはよ、葉月」 「おはよう」 彼女の横に座ると、友梨香しばらく私の顔を見つめて、耳元で囁いた。 「葉月、とうとうしたんだ」 「え?」 “した”と、聞きすぐに理解した。 私は驚き、彼女から距離をとる。 どうしてわかってしまったのだろう…… 恥ずかしい。 「独占欲強すぎだよ、御曹司。ここ……」 「え……?」 友梨香は私の首を指差して、笑う。 私は不思議に思い下を向く。けれども首元は見えるはずがない。 「綺麗についてるよ、」 「……」 もしかすると、あれだろうか。 疑ったのは、今朝見た赤い痕だ。 今日は気持ちがいっぱいで化粧なんてする余裕なくて、まじまじと鏡を見てこなかった。 赤くなる私の耳元に彼女がまた囁く。 「マーキング」 マーキングだなんて、すごい表現に、くらくらしそう。 私は首元を手で押さえる。 「それ、消してあげる」 「え?」 消せるのだろうか。 友梨香の言葉に驚き、目を瞬かせる。 すると、彼女が楽しそうに口の端を上げた。 何かを企んでいそうな顔にも見える。 「これで、消せるよ」 友梨香はポーチの中から肌色のスティックを出した。 それはコンシーラーだ。なるほど、と、内心胸を撫で下ろす。 私はすぐにトイレに連れていかれ、赤い痕を隠してもらった。 彼女にバレバレなことは恥ずかしいがありがたかった。 「ついでにメイクしてあげる」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

399人が本棚に入れています
本棚に追加