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友梨香のメイクはさすがだ。
私の顔は自身のメイクのときより、格段に綺麗に鏡に映る。
「ありがとう友梨香」
「いいよ。葉月可愛いからメイクするの楽しいし」
私はもう一度彼女に礼をし、再び教室へ戻った。
しかし、なぜかやけに周りの視線を感じる。
講義中もそうだったし、ランチのときも感じた。
もしかすると、まだ首の痕が消えていないのかもしれない。
周りの視線の先は、この痕ではないかと不安になる。
「ねぇ、友梨香」
「ん?」
「これ……隠れてる?」
何度か友梨香に確認したが、「隠れてるよ」と、教えた。
「ありがとう。ごめんね何度も。なんだかやけに見られている気がして……」
今も、講義を終えて、帰ろうとしているが、やけに視線を感じてならない。
「ただ、葉月を見てるんだよ」
「え、や、やっぱり本当は……」
思わず首を手で覆った。恥ずかしい……
「違う、そのせいじゃないよ。葉月いつもは周りなんて気にしないでしょ、葉月可愛いんだよ。だから見るの。それに今日は特に……」
「と、特に?何?」
「私のメイクで可愛くなってるし」
「え、ありがとう」
友梨香のメイクは本当にさすがだ。しかし私が可愛いというのは信じられなかった。
やはり、この首のせいかもしれない。
考え巡らせる私に彼女が明るく言う。
「たぶん私のメイク力、プラスと御曹司のおかげかな?」
前者はすぐに納得できた。
しかし、後者には時間がかかってしまい、友梨香に説明される。
「女になったからよ」
それで一気に理解することになる。
「もう……」
完全にからかわれている。
結局、この痕のせいだと私は思い、視線から逃れたくて、友梨香と別れたあと、待っていてくれた崎田さんの車に駆けるように乗り込んだ。
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