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「息がきれているようですが、大丈夫ですか?」
車に乗ってすぐ、崎田さんに心配まじりの瞳を向けられた。
「だ、大丈夫です。すみません慌ててたものですから」
小走りでここまできたが、息が切れるとは運動不足なのかもしれない。
しかし、崎田さんは私を見つめるのをやめない。
その、瞳がまるで首元を見ている気がして落ち着かない。
「何かあったんですか?」
「い、いえ。フルートの日なので慌てただけですから」
早く発進してもらいたい。
それが通じたのか、車は動き出す。
安心した私だったが、慌てた様子を不思議に思った彼がそのままにはしなかった。
私を自宅に送ったあとすぐに、共哉さんの耳に入れていたなんて、私は知らなかった。
今日は二度目のレッスンである。
山本先生は、私のメイクした顔に気づき「可愛い」と、褒めてくれた。
ただ、前に出された課題をほぼ練習できておらず、やんわりとだが怒られてしまう。
「主婦業に学校に、大変だと思うけど、来週までに練習しててね」
たしかにその通りで、私は反省する。
せっかく習わせてもらっているのに、恥ずかしくなった。
きっと、前に共哉さんが私に怒ったときは、こういうことを言いたかったのかもしれない。
メイクやショッピングもいいけれど、きちんとしなきゃと戒める。
先生が帰ると、宮前さんも続いて帰っていった。
私は反省したこともあり、少し練習してから夕食の準備を始めようとしたのだが、共哉さんが帰ってきたためやめた。
「お、おかえりなさい」
予想してたより早い帰宅に驚く。
「ただいま」
彼は返してくれたが、どことなく不機嫌な感じがした。
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